非常事態宣言が延長され、引き続き撮影にも出れない日々が続くので、写真関係の読書感想文(笑)を書いてみることにします。
元上司のご友人の作家・近藤雄生さんのご紹介の本で吉田亮人さんの「しゃにむに写真家」。久々に読んだとても勉強になる良い本でした。
安定した教員生活
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「あんた、こんな生活でええのん?」(怖い奥さん)
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教員を辞める決意
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辞めた後、何で生計立ててく?
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「あんた、昔写真やってたやん、写真家になり〜な」(怖い奥さん)
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写真家になる決意(この時点でカメラを持ってない)
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カメラとズームレンズ買う(レンズ1本のみ)
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そのままタイ ミャンマー難民キャンプまで写真を撮りに行く(教員辞めて2ヶ月)
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インド デリーからムンバイまで約1000kmを自転車で撮影旅行
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帰国してボッ〜としてたら奥さんに怒られる。笑
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ここまでで前半のごく一部ですが、これ以上書くとネタバレになってしまうので内容に関してはここでやめておきましょう。それにしてもカメラをお持ちになってこのEpson公募展入選まで何ヶ月なんでしょう? 僕なんか写真始めて5年ぐらい? 使った費用は100万超えで数十冊の写真(テクニック)関係の本を読んだりとずいぶんと時間とお金と労力を投資したけど、まだ初心者の領域から出てません。他人様(ひとさま)を撮るどころかフォトコンに応募する勇気さえありません。っていうか、このEpson公募展入選の時点での経験(すなわちカメラ買って数ヶ月?)しかなく技術的に殆ど何も知らない段階で雑誌社に作品を持ち込むという勇気と行動力に凄みを感じました。これも怖い奥様のコントロールのなせる技でしょうか? 笑
でも総じて感じられるのは、吉田亮人さんご本人の良い意味での「人たらし」的なご性格の良さでしょうか。ミャンマーでもタイでもインドでも中国でも被写体の人達と魂レベルで交流し人を惹きつけてしまう魅力がご本人におありになるんだと思います。写真の出版の際もみんなを巻き込んで引き込んで、そしてみんなの力を結集させて完成させてしまう「人たらし」ならではの魅力、まさしく「人間の光」に満ち溢れたお人柄なんだと推察いたしました。
「写真は誰でも撮れますね。でも写真は誰でもは写せない。『写す』ためには自分の中にある自分だけの情熱が必要なんです」
「社会の底辺にいる人間にも種まきをするんだ。僕が写真を撮る意味はそこにあるのかもしれない」
「あなたの写真を私たちが見なければならない理由は何なのか。わざわざ他人にあなたの写真を見せる理由、作品を世の中に向けて発表する意義は何なのか、、、」
とにかく、写真家を目指す人にとっては勇気ある言葉に溢れた良書です。しかし吉田さんが歩んだ方法で成功できる人はホンの一握りだと思います。百万人のジャンケン大会があるとしたら、最後に勝ち残った人が吉田亮人さんです。世間の物語はこういう最後に勝ち残った人にだけ光を当てます。どんな分野でもそう、みんな一欠片の才能と僅かな運とそして最後まで諦めない不屈の闘志が成功をもたらします。なので安定した職についている若者は、この本で勘違いしない方が良いかと思います。そろそろ65歳になる自分は相当勘違いしてますが、少し勘違いして勇気を持って出ていくぐらいの覚悟が必要なのかもしれません。笑 そんな勇気を貰える書でした。
あっ、それから本文の最後の奥様の一言に涙が溢れますね。奥様が素晴らしいと男は天まで届くほど成長する良いサンプルです。笑
矢萩多聞さんの装丁も吉田さんとの意気があって力強いサポートをしています。いろいろな意味で恵まれた人なんだなぁと思います。
写真家を目指す人だけでなく、人生の指南書としてご一読される事を強くお勧めいたします。