写真家 Nick FujimuraのPhotographer's eye

Sony α7シリーズ愛用の写真家のブログです。写真やカメラの事だけでなく生活全般いろいろ呟きます。

村上春樹著「古くて素敵なクラシック・レコードたち」は、こう聴こう!

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最近は内田光子シューベルトピアノソナタチャーリー・パーカーの「Charlie Parker plays Bossa Nova」をドライブ・マイ・カーの主人公のように運転しながら聴く程度しか音楽と接していなかった自分ですが、本書は僕の音楽に対する情熱を再び呼び覚まさせてくれたような気がします

以下、いろいろな文献から文章を拾ってきているので支離滅裂で読みにくい文章になってますが、基本的に本書はレコードを音源とした古い音響システムで聴く事が前提で書かれています。コンピュータゲームで例えるならば、「スペースインベーダー」で遊ぼうと思ったら昔のパソコンじゃないと動かないでしょ、だからアタリやコモドールのパソコンでスペース・インベーダーの面白さを語りましょうよ、みたいな。

村上さんは「ものを想像する人間は基本的にエゴイスティックにならざるを得ない」(小澤征爾さんと、音楽について話をする)、そして「僕の聴くのはやっぱり古い音源が多いしその古い音源をまずはちゃんと聴きたいと思ってますから、それで、僕の経験上新しい音源というのは比較的どんな装置でも普通に聴ける。でも、古い音源は新しい装置ではなかなか上手く鳴らないんですよ。昔の録音がどこか古臭く聴こえてしまうというか、昔の録音でも新鮮に聴くことができるのは、やっぱりその時代の装置なんだと感じました」(雑誌Switch2019年Vol.37)

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『常に一定の音が出ている事が大事だということ。それが僕のオーディオにおける一番の哲学になったんです」「あまりにいい音、研ぎ澄まされたいい音よりも、落ち着いた、安定した音でなけれいけない」(雑誌Switch2019年Vol.37)

即ち村上さんは、とにかく音楽を聴くことにどこまでも純粋な喜びを感じておられ、これくらいでは足りない、もっと奥まで追求したい、もっと前に進んでいきたい、という事を生きる上での重要なモチーフにされていること、そしてとにかく辛抱強く、タフで、そして頑固。自分がやろうと思ったことは、誰が何を言おうと、自分が思い描くようにしかやれない。(「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を一部引用)

以上が、村上さんの基本ポジションなので、間違っても本書で紹介されているLPレコードを蒐集されたりレコードプレーヤーを新たに購入されることのない事をお勧めします。笑 村上さんの数多の作品や本書からもわかるようにキューバ亡命されちゃうんじゃないかと思うぐらい1960年前後がお好きな方なので、何も本書で紹介されているような古い音源を求める必要はないです。

要するに、村上さんは、大人の趣味ってのは、自分の目と耳を総動員して感じて人生を通じて探し求める事なんだ、だから馬鹿みたいに高いブランド品を蒐めて他人の価値観の中で満足するのが趣味なのではなく骨董市で100円で見つけたようなものでも本人が本当に満足して自己完結するのが本当の趣味ってもんなんだよ、って事を言いたいんじゃないでしょうか?

では、現代に生きる我々は、本書をどのように活用していけば楽しめるのでしょうか? そうです、今はミニマリストの時代、LPレコードというモノに愛撫する時代は過ぎ携帯の中に持ち物の全てを持ち込める時代です。

Apple Musicは、2021年6月よりハイレゾ対応を開始しました。(「Apple Music ハイレゾ」で検索すればその方法がわかります)即ち、お手持ちのiPhoneDAC経由オーディオに繋げるだけで100万円のCDプレーヤー並みの音源で聴ける時代になっているんです。しかも7500万曲が携帯の中に収められています。(但し、自宅の光回線とかでwifiで聴かないと通信容量が莫大になるので要注意です。また、Air Pods類のワイアレスには対応していませんので携帯側の設定をハイレゾにしたままにすると通信料が嵩みます)

news.mynavi.jpそれから本書で紹介されているLPの一部は、Apple Musicで検索すれば見つかります。(検索方法には少し頭を使ってください。アルバム英文名や演奏者名で検索するとヒット率が上がります) 本書で紹介されているアルバム以外にも最近の録音で新しい音源が見つかりますので、本書のように各アルバムを比較して聴くと物凄く楽しめます。こうやって聴いていくと1曲にかなりの時間がかかります。なので本書は3ヶ月ぐらいは充分に楽しめます。また、村上さんの小説を改めて再読しながら、本書と併読しどうしてこの曲がこの小説に使われたのかを想像しながら読むと面白いです。因みに、前掲のシューベルト ピアノ ソナタは「海辺のカフカ」(P190)で大島さんが緑色のロードスターを運転しながら聴く曲(D850)ですが、本書では紹介されていません。代わりにD960(曲番)が紹介されていますが、この20年の間に村上さんの内部でどのような変化があったのかを色々な作品の中から読み解くのも面白いかと思います。また、「ドライブ・マイ・カー」の中で主人公の家福さんがサーブ900コンバーティブルを運転しながら聴いていたのがベートーヴェン弦楽四重奏曲(女のいない男たち、P27)です。本書では上下にわたってこの曲が紹介されています。なるほどこの曲の内容を知るとこの小説の中で何故使われているのかもわかるような気がします。村上さんは、ジュリアードSQ版がお好きなようですが、僕はゲヴァントハウスSQをお勧めします。最近のクラシックCDはリーズナブルでこんな名演奏の10枚入りセットが1000円もしない値段で買えます。

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参考として

村上春樹さんのオーディオシステム:

Loud Speaker:         JBL D130(主にJazz用) 

              Tannoy Berkley(主にクラシック用)

Integrated Amplifier :     Accuphase E-407

                                              Octave V40SE

Analog Player:                       Thorens TD520  /  Ortofon SPU-G series

                         Luxman PD-171A /  Ortofon MC10W

SACD/CD player :                  Marantz SA-1153

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私のオーディオシステムは村上さんのオーディオシステムの1/10の値段ですが、映画館並みの良い音響になります。ハイレゾで聴きながら目を瞑るとまるで生演奏を聴いてるようです。

Speaker: Electro Voice Tour-X

Power Amplifier : Crown D-45

PreAmplifier : Allen Heath Xone S2

Player: iPhone 11 ProMax

 それからお勧めのDACはこちらです。但し、中華系の製品なのでちょっと不安ですが、海外の評判を確認する限りとても良い製品のようです。量子化ビット数32ビット/サンプリング周波数768kならハイレゾを聴くにも充分過ぎるでしょう。

 せっかくDACを買ったならば、夜中に聴くためにヘッドフォンも良い物が欲しくなりますね。そういう時は、プロがスタジオの現場で使っているこちらがお勧めです。

 安くて超高音質のヘッドフォンはこちら。海外のスタジオではこちらが多いかも。

 


www.youtube.com

以上、本書はいろいろな楽しみ方ができる本なのでクラシック音楽をもっと深く探求したいと思われる方には是非お勧めしたい内容かと思います。